僕は先輩と鉱竜と一緒に、科学室の前に来た。
「ここから先は、自分で行ってきなよ。」
先輩に後押しされ、僕は科学室に入った。
薬品の臭いが立ち込める科学室・・・部屋には誰も居ない。
もう一つ薬品倉庫の扉がある。僕は扉をノックした。
「はい、なん・・・ああ、紅竜じゃないの。」
彼はジェラと言って、僕と同じ1年。
高校の時は、2年から同じクラスでよく話をしていたな・・・
「紅竜から、ここに来るなんて珍しいね。」
いつも一緒に居る、クラン先輩の姿が見えない。
僕は、思い切ってクラン先輩の事を聞いてみた。
「ん・・・ちょっと出かけているよ。あ・・・でも、もうすぐ帰ってくる時間だし・・・待っててくれないかな?」
僕も、クラン先輩に言わなくてはいけないし、帰るわけにはいかなかった。
先輩に、はっきり断ると決めたし・・・
椅子に座って話をしていると、クラン先輩が帰ってきたようだ。
「・・・ああ、紅竜君だね。待っていたのかい?遅くなってすまないね。・・・もう少し待ってくれ。」
そういうと、足早にジェラをつれて、科学室の方に行ってしまった。
そうして、いつもの白衣姿に変えて出てきた。
「遅くなってすまないね。今、彼に飲み物を用意させてるから・・・さ。」
これで、ようやく本題に入れる・・・
「クラン先輩。あの・・・」
断る知ってか知らずか、言おうとしている僕を止めた。
「君が言いたいのは分かっている。断りを言いに来たんだろ?」
僕が言おうとした・・・まさに、その通りだった。
「前々から気になってきたけど、そうか・・・迷惑をかけてすまないね。今まで協力してありがとう。」
意外にあっさり事が運んでしまった。
そう言った後に、ジェラが何かを運んできた。
「はいどうぞ・・・あと、先輩の頼んでたやつです。それでは・・・」
それは、入れたてのコーヒーと3つのファイルだった。
「でも、今回だけ・・・何とか頼めないかな?本当にこれを最後にする。・・・勿論、他の人に協力は要請しないよ。研究は大詰めなんだ。」
やっぱり・・・でも、これが本当に最後なら・・・
「本当に、これで最後でお願いしますよ。」
僕は、少し強気に出た。
断るどころか、最後の頼みを受けてしまった。
仁竜先輩すみません・・・でも、これが本当に最後なんです・・・
自分に言い聞かせ、コーヒーを頂いた。
「・・・いや、本当にすまない。逆に無理に頼んでしまって・・・」
そうして、気になっていたファイルを捲り始めた。
「君に、テスターをやってもらいたいんだ・・・ああ、生命の危険を伴う事ではないから、安心してくれ。」
そう言って、ファイルを渡した。
内容を見てみると・・・
赤いファイルの中を見ると、なにやら生き物のような物体の写真が貼ってあった・・・
蛸のような・・・なんというか、触手らしきものが・・・
そのあとに、難しい記号がいくつも並んでいた。
青いファイルの中を見ると、やたらと体格のいい筋肉質な獣人の写真が貼ってあった。
この獣人の相手をするのか・・・それとも・・・?
黄色いファイルの中を見ると、なにやら固そうな印象を受ける道具の写真と、色とりどりの液体が入っている瓶の紹介があった。
どれにするか困った様子でいると、先輩がこう言った。
「場所は、ここで行うことだから不安になる事はないからさ・・・」
ますます、不安になった。
でも、いつまで悩んでいるわけにもいかないし・・・
赤いファイルに決める
青いファイルに決める
黄色いファイルに決める